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フィンテックとオイコクレジット

フィンテックとオイコクレジット
(原題:テクノロジーという解決法)

2019年3月25日

フィナンシャルテクノロジー(略して「フィンテック」)は、世界中の金融業界に大改革をもたらしています。技術開発はどのように金融包摂を進めることができるでしょうか。フィンテックはオイコクレジットとそのパートナーにどのようなインパクトをもたらしているでしょうか。

アメルスフォールトのオイコクレジット本部事業開発担当Vincent van Dugterenさんに、オイコクレジット西部ドイツ支援組織が聞きました。

Vincent van Dugterenさん

Vincent van Dugterenさん

 

フィンテックは、金融包摂セクターにとってどれほど重要でしょうか。
また、オイコクレジットの事業にどのような変化をもたらしているのでしょうか。

近年、新しいテクノロジーは金融業界を大きく変えました。最も熱い注目を浴びているのがフィンテックで、セクターに多くの変化をもたらしています。たとえば、金融サービスを、より迅速に、効率よく、またもっと個別にカスタマイズできます。

昔ながらのマイクロファイナンス機関(オイコクレジットの金融包摂ポートフォリオの主要部分を占めます)も、融資先の管理に高度なテクノロジーを使い始めました。また、クライアントにはモバイルマネー等の電子決済サービス提供が増えています。従来の銀行口座も必要なく携帯端末で送金ができるからです。

新興市場のフィンテック企業が、金融包摂セクターの革新的な技術開発と高度なデジタル化手続きに拍車をかけたのです。

 

従来のマイクロファイナンスでは、顧客との個人的な関係が重要でした。
フィナンシャルテクノロジーの台頭で、この関係は失われることになるのでしょうか。

サービスが迅速かつ簡易化され、職員が個々に書類や現金を抱えてたくさんの小グループ顧客を訪ねたり、集落へ出向く必要がなくなれば、時間的余裕ができます。金融包摂には、人とテクノロジーの相互作用が求められます。フィンテックそのものは、担当者と顧客の直接的な関わりの代わりになるものではありません。実際、近頃の金融包摂トレンドは、「tech-and-touchテク・アンド・タッチ(テクノロジーも人との触れあいも)」という人間的なつながりを大切にしています。

更に、フィンテックは、技術開発のほか、マーケティング、カスタマーサービス等の分野で、新しい雇用を生み出しています。20億近くもの人々が金融サービスを受けられずにいる現状で、この莫大な需要を満たすためにはそれに対応できる多くの資源が必要です。

私は、このテクノロジーの進歩とその社会経済効果について非常に楽観的です。テクノロジーの適切な使用は金融包摂に関わる問題解決策の一つであり、オイコクレジットはこれまで金融インフラが整っていなかった地域の人々にサービスを届けられるよう努めています。

 

オイコクレジットのフィンテックパートナーは、顧客の日常のビジネス簡素化のためにどのような商品やサービスを提供していますか。

フィンテックは、オイコクレジットにとってまだ新規の分野です。現在私たちは、中小零細企業に金融サービスを提供するフィンテック企業5社に融資しています。

オイコクレジットパートナーのTienda Pago(メキシコとペルーで営業)は、地元で日用品を売る小店を営む小規模起業家に短期貸し出しをしています。このような店は商品を仕入れることが必要ですが、お金は商品が売れた時にしか入ってきません。

手持ちの現金が少なければ仕入れ量も少なくなり、結果的に売上げも利益も少ないままです。注文引受可能最少量を卸売業者から仕入れることができれば、仕入れ値も下がるのでしょうが、そのための資金が足りないことが多いのです。

Tienda Pagoは、小規模商店が、携帯電話技術を使って長期発注できるシステムを開発しました。仕入れ代金は、融資限度額の範囲内で、Tienda Pagoが卸売業者に直接前払いします。
そして、店は商品を売った後Tienda Pagoに借入金を返済します。このようにして、店はコスト的にも時間的にも効率よく商品を仕入れることが可能になります。その結果、店主はより多くの収入を生み出し、信用履歴もデジタルデータとして残るのです。

コロンビアにあるパートナーSempliは、中小企業向けに複数年度にわたって1万から10万米ドルの運転資本融資を行っています。中小企業は、多くの国で雇用先の大半を占めているため、その国の社会経済状況を色濃く表しているのです。

しかしながら、(オイコクレジットが活動する多くの国でよくあることですが)、コロンビアの中小企業は充分な資金調達が非常に難しく、それが成長の妨げとなっています。中小企業は、マイクロファイナンス機関にとっては金額の規模が大きすぎ、一般の銀行には規模が小さすぎます。金融機関にアクセスできず資金の流入が不足する、いわゆるミッシングミドルと呼ばれる層なのです。

Sempliは、tech-and-touchを経営モデルとし、たちまちコロムビアの中小企業のためのトップ投資会社となりました。Sempliのクライアントはオンラインで融資を申し込むことができますが、審査はデータに基づく信用評価と現地であらゆる顧客と対面で行う詳細な調査を組み合わせて行われます。

銀行融資とは対照的に(中小企業を相手にしてくれると仮定してですが)、オンラインで申し込むと72時間以内に融資を受けることができます(何週間もかかりません)。

 

オイコクレジットがフィンテック企業に融資するリスクはどんなものでしょうか?

フィンテック企業の多くは創業間もなく、急成長している会社です。一般的には、社会的インパクト業界でのフィンテック企業との取引経験はまだ多くはありませんが、私たちが急速に理解を進めるにつれてそれも変わってきています。

たしかに、比較的新しいセクターで、歴史の浅い会社への投資はリスクがあるかもしれません。しかし、このセクターに投資をしないことも同様にリスクになり得るのです。フィンテックはすでに普及しています。

10年もたてば、これらの会社もあえて「フィンテック」と呼ばれることもないくらいになるかもしれません。なぜなら、仕事の仕方や提供する製品やサービスの面で、全ての金融機関が今までにないほどデジタル化するという潮流が明らかだからです。この新しい現実に適応していくことが今後の課題なのです。

 

オイコクレジットはどのようにリスクを最小化するのでしょうか?

現在、私たちの金融包摂ポートフォリオに占めるフィンテック企業への投資シェアは大きくありません。フィンテックに投資をする場合には、他のすべての投資対象の会社と同様、徹底的な調査と分析をします。

また、経験と知識を共有するために、ほかの社会的投資家との情報交換も行っています。さらに、40年以上にわたる開発融資提供の経験を、フィンテック企業への投資基準を確立するために活用しています。

マイクロファイナンス組織への融資に関して、オイコクレジットはその開発の最前線にいます。例えば、2018年には「責任あるデジタルファイナンスサービスへの投資に関するガイドライン」の立ち上げに共同参加しました。多くの社会的志向のあるフィンテック企業は、私たちと協働し、長年にわたる経験から何かを得たいと望んでいます。次の段階として、私たちの既存の金融包摂パートナーとフィンテック企業の結び付きを増やしたいと思っています。そしてその会社同士がお互いに学び合うだけでなく、社会的インパクトが生み出されるような協働ができればと思います。
私たちは、革新的な技術により発展途上国の低所得者の生活の質が向上することを望んでいます。

The adoption of mobile money services continues to advance

 

今後どんな革新的なフィンテックソリューションが業界の変化を牽引すると思いますか?

近年の信用取引と支払いにおけるイノベーションの流れに続いて、マイクロ保険の分野でも多くのことが起こると思います。ひと月あたり数ドルで加入できる保険が必要な人々と保険会社を結ぶ技術基盤が増加すると予想されます。

私はすでにフィンテックと既存の金融機関が手を組んでいる例を少し話しました。フィンテックは極めて革新的なソリューションを開発したかもしれませんが、まだ多くの顧客を獲得しているわけではありません。一方で、既存の金融機関はすでに多くの顧客を抱えていますが、マーケットにおける最良の解決策を活用できているわけではありません。両者が協働すればお互いの強みを活用できるようになります。

他の分野にブロックチェーン技術がありますが、その使用については多くの誇大宣伝があり、私たちもまだ広範囲で実用化されている例を多くは確認していません。この技術がどこに向かっていくかはまだわかりませんが、引き続き注視していきたいと思います。私は、まさにこの渦中で働くことができる幸運な立場にいます。【編者注:ブロックチェーンは、インターネット上の匿名かつ透明性のある取引を可能にする。データは、全ての参加者によって検証と認証が行われ、変えられないように蓄積されるため、改ざんが極めて困難になる。】

 

(翻訳協力:東京YWCA 国際語学ボランティアズILV)

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