小規模農家への投資が、世界の人々の食料供給と貧困削減の鍵
2017年11月13日
by Eugene Ellmen
国連は、世界の人口が現在の約70億から増加し、2050年までに90億を超えると見込んでいます。これは、今後、世界中の農家が土壌や水、地球環境への影響を抑えつつ、食料生産量を大幅に増やさなければならなくなるということです。
小規模農家は、かつて専門家から重要視されず非効率だと低く評価されていましたが、このジレンマを解決する鍵として、いま脚光を浴びています。というのも、小規模農家はそれぞれの土地に見合った知識とやり方で農業を営むことで、土地や資源が企業化され損益の視点だけで利用されるのを防ぐのに役立つからです。その結果、環境への影響や二酸化炭素排出量を抑制し、より持続可能な農業のやり方を生み出します。
しかし、小規模農家が生産量を増加し、拡大する将来の食料需要に応えることは可能でしょうか。
答えはイエスです。ただし、重要な条件付きです。それは、生産性向上に必要な資金を小規模農家が調達できれば、食料需要の増加に対応できるということです。
Initiative for Smallholder Financeとマスターカード財団が出した昨年のレポートで、この大がかりな取り組みを進める上での課題について概略が述べられています。
2013年に創設された社会的企業Vasham Kosa Sejahtera (VKS)は、耕作面積が平均1ヘクタール未満の小規模トウモロコシ農家にバリューチェーンファイナンスを提供しています。このビジネスモデルにより、生産リスクを軽減し、最良の収穫を確保できます。VKSが農家とインプットサプライヤー(種子、肥料等販売者)、飼料工場、バイヤーを結びつけることにより、農家はバリューチェーンに参入できます。これは、小規模農家の経営規模や生産量を考えると、支援がなければ難しいことです。この結びつきのおかげで、小規模農家は種子や肥料への支払いを減らし、もっと高価に生産物を買い取ってもらうことができます。VKSは、2017年からオイコクレジットのインドネシアにおける最初の農業分野のパートナーです。
新たな時代
「農家と金融サービスを結びつける21世紀初頭の新たな動きは、新しい『農民向け融資時代』を切り開いた」、「しかしながら、こういった時代の変化にもかかわらず、小規模農家の資金需要と金融サービスの資金供給とのギャップは大きい状態が続くと見込まれる。」と、このレポートでは指摘されています。
また、ラテンアメリカやサハラ砂漠以南のアフリカ、南アジア、東南アジアの2億7000万人の小規模農家から年間2000億ドル以上の資金需要があると推定しています。途上国の国営銀行、マイクロファイナンス機関、商業銀行、農業関連金融機関、非営利組織や、私が勤務するオイコクレジットのような社会的投資機関は、それぞれ役割を果たしています。しかしながら、こういった組織や機関の積極的な取り組みにもかかわらず、実際の貸し出しは年間500億ドルで、まだ1500億ドルの資金が不足しています。このレポートには『転換点:農民向け融資時代における成長を引き出す』と表題がついています。潜在的成長を引き出すために必要な改革に取り組むように、農業団体、金融機関、政府等、すべての関係者にアクションプランをよびかけています。
レポートでは3つの戦略に焦点を当てています。1つ目の戦略は、融資を利用しやすく魅力的なものにするため、融資と技術支援を一体化し、農家を商品開発の中核に据えることです。2つ目は、金融機関、農業関連産業、非政府組織が、コスト削減や新たな市場開拓をしながら、小規模農家支援のために、相助作用によって互いに成長する必要があることです。3つ目は、リスクを減らし、資金供給を増やすために、慈善や市民寄付も巻き込んで「かしこく資金不足を補い」ながら、「ブレンドファイナンス」戦略を生み出すことです。
今こそ、アクションを
「今こそ、小規模農家向け金融を新たな軌道に乗せて、何百万人もの農家とその家族がもっと確実に成功できるようにするときだ。」とレポートでは訴えています。
社会的責任投資への機関投資家と、これらの投資家に支えられている機関は、この小規模農業のすばらしい機会を後押しするときです。それは地元の収入と何百万人もの食料安全保障、地球環境・気候保全を左右するのですから。
このブログは、”Your Guide to Responsible Investing”に掲載されたものです。
Eugene Ellmen
2013年よりオイコクレジットに勤務。カナダ、米国のナショナルディレクターを務める。その前は、カナダの社会的責任投資(SRI)の全国組織Social Investment Organizationでエグゼクティヴ・ディレクターを13年間務めた。カナダのSRI第一人者の一人。その優れた業績によりナショナル・アワードを2回受賞。
(翻訳協力:東京YWCA 国際語学ボランティアズILV)