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マイクロファイナンス・カフェ3 「最貧困層をどう支援するか、ザンビアの事例から」ご報告

マイクロファイナンス・カフェ3
「最貧困層をどう支援するか、ザンビアの事例から」 ご報告

(2015年11月21日(土)13:30 – 16:30 東京都文京区小石川運動場会議室)

第3回目のMFカフェでは、アフリカ南部のザンビアの首都ルサカのスラムに住む女性達に10年近く、支援をしてこられた菊地さんにその取組みを発表して頂き、参加者と共に議論しました。
女性達の意見やニーズを尊重して、マイクロファイナンスの仕組み作りを行い指導する菊地さんの誠実な取組みが感じられました。一方、資金管理の方法では課題も見られ、また金利をどのように設定するかについても議論がありました。発表のポイントと、主な議論をご紹介しましょう。

ザンビアの女性の事業の様子を紹介 (菊池さん)

ザンビアの女性の事業の様子を紹介(菊地さん)

オイコクレジットが支援する自助グループの説明 (粟野 運営委員)

オイコクレジットが支援する自助グループの説明(粟野 運営委員)

1. ザンビアの事例紹介(菊地めぐみ)

(発表資料は、こちらからご覧ください。)

1) 支援の経緯
➢ HIVが蔓延するザンビアで、首都ルサカのスラム地域で、HIVで夫を失った未亡人を対象に支援を計画。女性達はマイクロクレジットを希望したが、十分な資金が無かったため、収入創出活動でまず資金を増やすことに。(2006年6月)
➢ 収入活動の失敗: ソーセージの製造は1回目は成功したが、その資金でスモーク用のドラム缶を購入したため材料費が無くなり中止。チョコレートバナナは、2回目から売れ残りが出て、女性達がやる気を失った。
➢ 元々に女性達が望んでいたマイクロクレジットに移行。(2007年12月)
1回目の融資: 会計簿の付け方を指導。15名に約3000円の融資を実施。4-5名のグループ連帯保証。ミーティングを重ね、問題は全員で話し合い解決策を見出すように努力。銀行口座を開設しメンバーが管理できるように。
2回目の融資: 自主的な運営を目指して議長・書記・会計の選出。メンバーの要望があり連帯責任性を廃止
2009年12月: 菊地さん帰国後、メンバーは20名に、菊地さんの代理の日本人女性が週1回ほどモニタリング。半数以上が返済遅れや無返済に。MFの研究者やMF機関から返済を促す仕組みや出口戦略の必要性のアドバイスがあり。
2010年9月: 日本人によるモニタリングが無くなり、返済状況は一層悪化。活動停止も考慮。
2011年6月: 現地のMF機関のアドバイスがあり、返済回収後、規則を改正し再スタート。金利や返済期間、担保の設定などMF機関が指導。

2) 現在の運営方法
個人に貸付(連帯責任は無し)、手数料や担保(家財道具等)を設定、毎月のミーティングで返済、延滞者にはリーダーが取り立てる。 2014年に貸金業の資格を取得し、返済延滞者を警察に通報することが可能に。ATMが近くにないので、銀行口座は使わす、回収したお金は次の融資としてメンバーに手渡す。

3) 利用者の仕事
露天商や行商が多い。他には醸造酒を製造販売など。

4) 利用者のコメント
➢ MCを受ける理由: ビジネスの再開・拡大、収入を増やし子供の教育資金に
➢ 資金使途: 小規模ビジネスの回転資金、設備投資、トイレ建設、土地の購入
➢ MC利用後の変化: 生活水準の向上、希望が持てるようになった
➢ MCへの要望: 融資額の増加、職業訓練などの実施
➢ 将来の夢: 利益が拡大できる商品への転換、土地の購入、新規ビジネス

5) 今後の展望
ミーティング場所の確保、フリースペースのような場所の創出
活動の広がりを期待するが規模を大きくすることは難しいかもしれない

6) その他
➢ この活動は「連帯責任性のない」ことが評価され利用希望者が増えている
➢ 現地の人々による自主性の高い運営になってきている。最初の収入創出活動での失敗を踏まえて、日本人の考えを押し付けないよう、できるだけメンバーの意見を尊重している。
➢ 活動が現地の人々に夢や希望を与えられていることを実感

 

2. 最貧困層へのMF―政府・NGOやコンポーネント型支援の課題(粟野晴子)

(発表資料は、こちらからご覧ください。)

(コンポーネント型: プロジェクトの一部としてMFを導入する形態)
1) 低い金利設定や低い返済率から資金が枯渇する、プロジェクト終了と共にMFが停止するのでインパクトが続かないといった問題がある。
2) これまでの失敗例や成功例を見ると、出口戦略の設定、制度設計と能力強化、そのためのMFの専門家の導入、適切な実施主体の選択(誰が運営するのか)、コミュニティベースのMFの可能性といった教訓が引き出される。
3) ザンビアは人口密度が低く、アフリカでもMFの発展が遅れていた国で、サービスを受けている人々の数もまだ7万と少なく、ニーズに応えられていないと考えられる。その中で、菊池さんのプロジェクトは、現地の人々のニーズに対応して制度を作っている。同プロジェクトは試行錯誤をしながらも前述の教訓に沿って制度設計をしている。ただ、まだ援助資金に依存しているので、持続的な制度になるには、更なる能力強化や指導も必要。オイコが支援しているインドの自助グループの例は、参考になるかもしれない。

 

3. 主な議論

1) 金利について
(質問)金利は年利にすると非常に高くなるが、利用者にとって返済負担は収入でカバーできるものか?また、ザンビアには金利の制限は無いのか?
(回答)金利は、借り手にも分かり易いように、貸付額の32%を3ヶ月または6ヶ月に対して課して、毎月の支払いを等分にして設定している。当初はあまり高い金利をかけたくなかったので10%にしていたが、MF機関に指導されて他のMF機関と同様の金利だということで、この率にした。女性達は行商などの事業をしているが、この金利でも返済できている。高利貸しよりは安い。この金利でも、このグループだと連帯保証が無いので、新たにメンバーになって融資を受けたいという人が多く、金利設定は妥当で返済可能な範囲だと考える。ザンビアには、現在のところ金利の制限が無いが、MF機関として登録しているところに対しては、金利の上限を設定しようという動きがある。(菊地)

2) 融資の際の審査、返済サイクル、担保など
審査は、申込があった時点で家庭訪問や家族の就労状況などを見ている。児童労働はルサカでは見受けられない。返済サイクルは、最初は毎週だったが、行商の人は月末につけの収入があるので、月1回にした。ミーティングも負担を考えて月1回に変更し、その時に返済回収をしている。家具などを担保にしているが、差し押さえたことは無く、主には「脅かし」効果。グループは貸金業のライセンスを取ったので、返済遅れがあった場合は、警察に通報して返済するよう働きかけてもらっていて、この方法は効果がある。ザンビアの警察は高いレベルで機能している印象。また、最終的に裁判にかけることもできる。回収金はすぐに次の融資に回しているので、回収した資金を持ち帰り保管することは無いので、安全は確保できている。(菊地)

3) 貸付資金の額や利用について
最初に融資を始めた時の貸付額は3000円で、少なすぎると言われたが、現在の約1万円の額は、露天商などの小規模ビジネスを始めるなら十分。どのように使っているかは管理していない。使途について限定しておらず、消費に使われている部分もあると思う。関心はあるので、調べてみたい。(菊地)
融資を消費に使うことで、資金が無い時も食料など一定の消費レベルを維持するというニーズもあり、MFが消費ニーズに応えるのも良いのではという見方が広まっている。(粟野)

4) 他のサービスや指導について
他のMFサービスは今のところ行っていない。家計簿の指導などについては、支援を始めてから、元々家計簿を付けている人がいたり、ビジネス指導へのニーズが高かったりしたことが分かった。現地のニーズに沿った支援が必要だと、活動を通して理解した。こちらからモーチベーションを上げるよう働きかけるより、まずはニーズを引き出したい。(菊地)

5) モニタリングについて
現在、年に1回様子を見に行く程度で、MF機関のアドバイザーの元に、自主的な運営が進んでいる。ただ、資産や貸付残高などの決算はまだできていない。(菊地)

6) コミュニティベースのMFの定義
コミュニティの住民が自主的に運営するMFを意味する。今日の事例のような小さなグループの他に、地域ベースの信用組合も含まれる。大きな金融機関では人々の情報の収集が難しいという問題があるが、コミュニティベースのMFであれば、情報を持っている住民が運営するので、この問題を解決できる。また、住民がオーナーとなることで、「自分たちのもの」という意識や責任感が高まる。(粟野)

7) オイコクレジット・ジャパンによる資金募集について
オイコは、元々、教会を母体として脆弱な人々を支援しようと設立された団体で、収益を上げることを目的にしておらず、年金などの機関投資家から資金を集めることはしていない。世界各国の支部が、主には個人から資金を集めている。MF機関へ9%で融資をしても、その収入は投資対象の能力強化支援(商品開発)などにも当てていて、出資者への配当は2%である。しかし、オイコ・ジャパンは任意団体なので、現在、出資者に配当が出せない。配当を出せる組織形態への転換を検討中。(粟野)

 

講師紹介:

菊池めぐみ  日本福祉大学大学院国際社会開発学専攻修士課程終了。
JICE(日本国際協力センター)コーディネーター・JICA研修監理員業務の傍ら、ザンビア滞在中に立ち上げたMF支援をライフワークとして実施。
粟野 晴子 (オイコクレジット・ジャパン 運営委員)
MF研究者・国際開発コンサルタントとしてアフリカ・アジアで様々なMF調査や強化支援・研修などを実施、金融包摂研究会(FI研究会)にも編集局次長として関わる。

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