ルワンダの事例 ―コーヒービジネスと民族融和―
2015年8月19日
Ging Ledesma(オイコクレジット 社会的業績評価部長)
ルワンダ南西に位置するルシジ(Rusizi)地区 で「ナース・ボスコ」として知られているジーン・ボスコ氏(Jean Bosco Ngaboziza)は有名な存在です。1994年の大虐殺(ルワンダ紛争下)の後、彼は自分の周りの多くの未亡人や孤児が極限の貧困下で生きていることに気づきました。インドを訪れた後、コーヒー農家による協同組合を立ち上げようと計画していたボスコ氏は2006年、2000万ルワンダ・フランの融資を受け、最初のコーヒー豆洗浄所を設置しました。
また、ナース・ボスコはRusizi Specialty Coffee(RSC)というコーヒー豆の輸出会社も立ち上げ、協同的なビジネスモデルとして運営しています。ルシジ地区はコーヒー生産には理想的な温暖な気候で、住民の約4分の1はコーヒー栽培者です。今日ではRSCは年間200トン以上のコーヒー豆を加工しています。
私は、首都キガリにあるオイコクレジットのルワンダ事務所を訪れ、カロンギ地区とルツロ地区を巡り、ナース・ボスコ氏に会ってRSCを見学しました。そこは、多くの点で特別な運営をしていました。
世界銀行によると、ルワンダは2000年より毎年平均7%のGDP成長率を誇り、最も経済を改善した10カ国のひとつに数えられていますが、依然、人口の44.9%は貧困層とみられています。そのような中、RSCのようなビジネスモデルは小規模農家の収入向上につながっています。RSCの提供する水洗処理場のコーヒー農家の多くは、自作農地をたった半ヘクタールほどしか持っていませんし、季節労働者の95%は女性です。
RSCは、運営する地域のコミュニティと確固とした関係を築いていることでも有名です。
地元農民に向けた看護学校の設立や、貧しい家庭の子女に向けた奨学金制度の設立、恵まれない家庭への牛の配布などを行っています。
RSCの存在意義はそれだけではありません。かつて大虐殺の加害者、被害者であった両者が急斜面の続く農園で一緒にコーヒーの実を摘み、暗い小屋の中でその実の処理をしていく。人々は隣に並んで一緒に働いているのです。
RSCは、確かな平和と安全の維持に不可欠なルワンダの人々の和解という長期的なプロセスにも貢献しています。
滞在中、私はオイコクレジットの支援を受けているパートナー団体のビジネスが地域にもたらす沢山の有益な成果にしばしば心打たれました。RSCは、人々の生活に多大なインパクトを与えている良い一例です。「人々を貧困から救う」ことはオイコクレジットの優先事項ですが、「すべての人々に尊厳のある生活を」というビジョンを達成するためには、我々の金融開発アプローチはもっと幅広いものでなければなりません。
Rusiziは現在、レインフォレスト認証(野生生物の保護、土壌と水源の保全、生計の向上などを通じて長期的な持続可能性の達成を目的として、 厳格な基準に則って管理していることを示す認証)の手続き中ですが、年末には手続きが終了するとみられています。
(翻訳協力: オイコクレジット・ジャパン ボランティア 岩切智実)