ニワトリといると自由を感じます
~ スタディーツアー in ペルー ~
2019年1月30日
2018年12月に、オイコクレジットの出資者やボランティア、スタッフたちは、1週間のスタディーツアーでペルーを訪ねました。訪問先の一つに、首都リマ郊外で金融包摂に取り組む組織のProEmpresaとその顧客が含まれていました。オイコクレジット西部ドイツ支援組織のMarison Wedegärtnerさんが旅の印象を語りました。
私たちはまずDimas Moralesさんを訪ねました。ツアー中、印象的で、強い意志をもつ女性たちに出会いましたが、その最初が彼女でした。
首都リマは砂漠地帯にあり、それは南東へ進むにつれて、より一層顕著になります。通訳のLeila Loaiza さんによると、「目にするすべての草木や花は、人が植え、水を与えたもの」とのことです。リマの裕福な地域では、塀越しにヤシの木や鮮やかな低木が庭で育っています。
オイコクレジットパートナー組織のProEmpresaの事務所は、リマの海岸沿いの高級地区ミラフローレスから車で1時間30分ほどのマンチャイにあります。砂ぼこりを払うため、女性従業員は常にテーブルと床を拭かなければなりません。(マンチャイでは、砂ぼこりがあまりにもひどく、家や丘の輪郭が見えないほどです。)
さらに旅を続けると砂利道になり、世界のあちこちで見かける光景を目の当たりにします。舗装されていない道、いつも工事中みたいな簡素な住居、生活の足しになりそうなものを求めて人々がやってくるゴミの山々、野良犬たち…。たまに玄関先に何か緑の草木が見えると、それはじっとこちらを見つめるサンタとトナカイ飾りだったりします。
ここで暮らしている人々の75%は移民です。80%の人は水道を利用していますが、それ以外は民間企業から飲み水を買って、トラックで運んでタンクに入れてもらわなくてはなりません。
マンチャイの人口は、周りの丘にまで分布しています。この地域には、新しい移民の流入が絶えません。アマゾンやアンデス山脈、そしてベネズエラから、リマのより良い生活環境を求めてやってきます。
さらにでこぼこ道をのぼって高い丘の上にたどり着くと、Dimas Moralesさんが待っていました。彼女は700羽の雌鶏、威勢のいい雄鶏を数羽、たくさんの豚を所有していて、ProEmpresaのクライアントです。
Dimasさんの力強い主張
彼女は小柄で、頭の回転が速く、自信に満ちあふれた女性で、(活字にする値打ちのある)力強い主張を次々に語ってくれました。
1「収入を得るのに外見や年齢は関係ありません。」
2「私は、子どもの時からずっと、夫や息子に頼って生きたくはないと思ってきました。私は、常に自立して生きてきたのです。」
3「鶏と一緒にいると、私は自由とやすらぎを感じます。」
4「もし私が教育を受け続けることができていたら、どんなことを成し遂げられたか、ちょっと想像してみてください。」
優れたビジネスセンス
68歳のDimasさんが、5年前に「la selva (ジャングル)」を離れてリマ郊外へ移住したのは、ビジネス上の決断でした。ジャングルでの畜産は費用がかさみ、利益はほとんど出ませんでした。彼女にはリマに住む2人の息子がいて、1人は看護師、1人は建築の仕事をしています。2人とも母親の事業を手伝っていますが、それは彼女のものです。彼女だけの、彼女の仕事なのです。これは、彼女にとって非常に重要なことで、手を胸にしっかりおいて強調する事実です。
彼女はマンチャイに移住して、豚を購入するローンを組みました。養豚には高い費用がかかります。1匹の豚を売って利益が出るまでには時間がかかり、それまではとにかくひたすら投資を重ねなければならないのです。実際、Dimasさんのローン返済は容易ではありませんでした。Dimasさんは「でも私はローン返済を遅らせたくなかった」と言います。そこで彼女は養鶏に切り替えて、必要な資金を提供してもらえる金融機関を探しました。そしてたどり着いたのがProEmpresaでした。
Dimasさんは現在、ProEmpresaから5回目の融資を受けています(4,000ペルー・ヌエボ・ソル、およそ1,000ユーロ)。同行した彼女の融資担当者Mediano Gonzalesさんによれば、「ほかのマイクロファイナンス機関なら、こんな高地の顧客への融資は、難しすぎると考える」とのことです。
革新的な技術
Dimas Moralesさんが養鶏を始めて2年半が経ちました。鶏は、生後6か月で初めて卵を産みます。鶏の体重が7㎏ほどになれば売ります。Dimasさんは様々な品種の雌鶏を飼育していて、なかにはジャングルから連れてきた特別な品種の雌鶏もいます。
えさに紫とうもろこしやカリフラワーなどを混ぜると、卵に独特な風味ができ、通常1㎏あたり4ソルの卵が12ソルで売れるようになりました。
私たちはDimasさんと丘を下り、二つ目の鶏小屋で彼女の夫のTeófanes Espinozaさんに会いました。さらに下って彼女の家に行くと、庭に冷蔵庫が2つありました。息子のNeiderさんが改造した孵卵器です。「私は母が養鶏を始めたとき、どうしたら彼女がもっと効率よく仕事ができるか考えました。今までの方法の問題点は、雛がそれぞれ異なる時間に孵化してしまうことでした。」
建築関係の職に就いているNeiderさんは、マンチャイのインターネットカフェで、YouTubeの映像を見て勉強しました。そして、「コストを多くかけてはいけない」ことを念頭に、古い冷蔵庫を改造し、温度計と、雌鶏の行動(卵を抱いている時に転がすこと)を真似て、卵を回転する装置を取り付けました。
家の前に置かれた小さなバイクタクシー(トゥクトゥク)は、非常用発電機の役割を果たします。全てうまくできています。
将来展望
Dimas Moraleさんが言うには、「仕事はそれほど大変でない」そうです。畜産の仕事が忙しいのは1日で3時間ほどです。彼女はジャングルの小さなコーヒー農園でも収穫時に作業をしますが、それと併行して、残りの人生もずっと続けるつもりです。
さらに、彼女は飼育する雌鶏を5,000羽に増やす計画を立てています。そのとき話してくれたことが、彼女は2年間しか学校に行っていないこと、そして「もし私が教育を受け続けることができていたら、どんなことを成し遂げられたか、ちょっと想像してみてください。」だったのです。
(翻訳協力:東京YWCA 国際語学ボランティアズILV)